東和塾の卒塾生の中に、高校野球強豪の私立高校にスポーツ推薦(特待)で進学した生徒がいました。高2の夏にはエースナンバーを付けて活躍していたのに、高3になると監督に嫌われ、干されたあげく、最後の大会ではベンチに入ることさえ許されませんでした。
一昨年も、ある私立高校のバレー部顧問がわざわざ中学校まで来て、生徒と保護者と面談していました。好条件でしたが結局、オファーを断り、その生徒は都立高校に進学しました。
スポーツ推薦で高校進学を考えている生徒には、相談があれば、スポーツ推薦と聞こえのよい言葉に気を付けるように伝えています。甘い言葉に隠された本音を見抜くことは生徒にはできませんので、レギュラーの確約をある程度もらえなければやめるようにアドバイスしています。
高校としては、スポーツ推薦で生徒1名を入学させれば、3年間で200万円の収入増になります。生徒にはわからないのですが、学校経営上の問題もあるからです。
ラグビーと同じコンタクトスポーツであるアメリカンフットボール。今回の反スポーツ的プレーは、大学スポーツ界の指導だけでなく、中学や高校の部活指導、それらのあり方も問われて当然です。
日大・前アメフト部監督・コーチのお粗末な記者会見で、両氏にコミュニケーション能力が欠落していることは明白です。選手の声に耳を傾けずに、精神的に追い込んだ責任は容認できません。司会の日大広報担当者の言動も納得できません。大企業病ではないがマンモス大学病といえるほど危機管理能力が欠如していました。
中学や高校の部活にも厳しさと強圧をはき違えたスポーツ指導が根強く残っています。クラブチームなら、選手は他のチームに移籍できますが、部活は転校しない限り不可能です。勝利至上主義の理不尽な指導が横行しているのです。
小中高と指導者の顔色を見ながらプレーし、大学体育会の強制的指導下でイエスマンとなった選手が一流企業から一発内定をもらえる現実があります。何が大事なのかを忘れてしまっているのかもしれません。
それにしても、20歳の日大選手の語った内容は痛々しいものでした。
「高校で熱中したアメフトを大学ではあまり好きでなくなった」
顔を出さないと謝罪にならないという強い気持ちで会見し謝罪したこの選手こそ、日本の企業に必要な真の人材ではないだろうか。